読書日記 LAフードダイアリー

オリンピックに沸き立つ東京で

スポーツ観戦は大好きだけれど、結局オリ・パラは一つも観ずに終わった。

野球もクライミングもサーフィンもスケートボードもマラソンも、楽しみにしていたんだけどな。スポーツは私たちを冒険に連れて行ってくれる。

なのでこの夏の思い出といったら連日の酷暑ってくらいで。とはいえこの情勢ではバカンスに行くことも出来ない。なかなか辛い夏であった。

 

そんな中、自宅にいながら安全な旅をアテンドしてくれた本を少しずつ記録しておこう。せっかくなので。

 

 

1年間滞在した自身の体験や、ローカリストの言葉を交え、世界中から移民が集まってくる特殊なL.Aの食文化について考察した一冊。

アメリカのご飯といったら、ステーキとかBBQとかハンバーガーとか…ピザとか?野菜食べませんみたいなイメージだけど、ここで綴られるのはL.Aの日差しと同じくらい極彩色の多様な食文化。行ったことないから日差しとかわかんないんだけど。

ニューヨーク(の田舎)で育った帰国子女から聞く話では、やっぱり日本の片田舎で育った私とは食べてきたものが違うんだけれども、輪をかけてロサンゼルスの食文化は衝撃。先ず一年中温暖で四季の変化があまりない。ので「四季折々の食材」という概念がない。それめっちゃ飽きない?と思うのだけれど、その代わりにチャイナ、メキシコ、エチオピア、イランなどなど、もちろん日本人街もあって、動けば動くほど多種多様な料理を食べることができる。そして世界中から集まる移民の伝統料理同士から生まれたフュージョンの数々。これはもうL.A料理というジャンルの一つといっていいんだろう。

L.A市民から敬愛されているという料理評論家、ジョナサン・ゴールドの映画や著書をなぞりつつ、三浦さん自身でローカル・レストランを廻りながら、「多様性」について知見を広げてゆく。

ロサンゼルスという都市全体の構造についても詳しく書いてあり、これは全く行ったことのない人にとっては、とても腑に落ちる。それらと食文化と合わせて「スロー対ファスト」「オーセンティック対リミックス」の対立構造を紐解いていく。その終盤は圧巻でした。

また、この方なんだかすごく語り口に愛嬌があって、最初から最後まで楽しく読めた。お子様もいらっしゃるしね……ご飯が合わないと大変。超ピンチなんだけど、親しみのある文章でなんか可笑しかったです。

そして映画研究者らしく、アメリカにおける「映画と牛の関係」というテーマで講じた内容もとても興味深く、目からウロコ。そんな視点で映画も牛も見たことないワ……。

 

 

皆それぞれ心に残る味、あるよね。それが美味しいかどうかは問題ではなく。

その一つ一つに優位性は無く、レガシーとしてあり続けていく。

それって、食だけではなく色々なことにいえて、それが隣人への尊重につながっていくのだと思う。

 

 

それにしても、外食したいな……。我慢しているけれど、行きたいところ、たくさんあるよ。