お彼岸の時期になると、必ずおはぎを作っていた。
うちは、春でも粒あん。ぼたもちではなく、おはぎである。
くつくつと小豆を煮ている横で、祖母がもち米をすりこぎで潰している。私たち三姉妹は、出来上がったあんこをつまみ食いするために、用もないのにダイニングテーブルの周りをウロウロし、まだ出来ないからあっちに行っていなさい、と怒られる。
そうはいっても祖母も心得たもので、必ずあんこは多めに作ってあり、三人の子供が何度も盗み食いしていけば、かなりの量が消えているはずなのだけれど、不思議と最後はぴたりと量が合う。
出来上がった、大人の握りこぶしほどの大きさのおはぎをお供えして、私たちは春と秋の訪れを感じていたものだった。
先日姉から、祖母が近々施設に入ることになるだろう、と聞かされた。
今年95歳の祖母。肉が大好きで、ビールも嗜む健啖家。最近まで畑に出て、草むしりをしていた。貧困からも原爆からも脳卒中からも生き延びた強い祖母。
私たち三姉妹が揃ってあんこ好きになったのは、あの祖母の大きなおはぎのせいだ。美味しいだけじゃない、いつもワクワクして楽しかったから。
私の子も、あんこデビューをした。気に入ったようで、何度もちょうだいちょうだいと口を開けてせがんできた。君も好きかい?あんこ。
今度は私が、大きな大きなおはぎを作ろう。
今週のお題「あんこ」